メディアや国会の審議で社会保障制度(年金・国民健康保険・介護保険)の危機が論じられています。“将来大変なことになるらしい?”と漠然と不安を募らせながら、具体的にはその大変さに思い至っていないのが多くの人の現状だろうと想像します。
社会保障制度は年金制度・国民健康保険制度・介護保険制度からなりますが、年金は開始時期を遅らせるなどの対策が検討されるものの、必ず出さねばならない必要費用で、問題は医療費と介護費の右肩上がりの増加。看護大学生として医療を学ぶ娘を通して、一人の心ある現役財務官僚が「従来の医療制度の限界や病気対応の意識改革をしなければ、医療・介護の社会保障制度の崩壊は免れないこと」を本や講演活動で訴える活動していることを知りました。3B通信を通し、少しでも彼の語る状況をお知らせし、将来の危機を回避する為に私達国民一人一人に何が出来るか、何をしなければならないかを共に考えて行きたいと思います。
●国民健康保険制度は深刻・危機的状況
医療費は2014年40兆8017億円、2015年42兆3644億円です。1年で1兆5千億円の増加です。この試算からすると団塊世代が全員後期高齢者になる2025年には介護費も含めると今より、20兆円の増加が見込まれ、この財源確保には消費税を20%以上に引き上げる必要があります。もし、消費税増税や保険料の引き上げが出来なければ、何が起きるでしょうか?医療サービスの制限や一部が対象から外される。つまり国民皆保険の終焉で、お金が無いために必要な医療が受けられない事態となります。ヨーロッパではすでに費用対効果の考えが導入され、高齢者を中心に利用出来る公的医療サービスが少なくなっています。今の日本の高齢者の様に、費用を考えずに好きなだけ医療を使える国は他にはありません。この状況を真剣に考えなければなりません。
●国民皆保険制度を変える難しさ
崩壊する前に制度の見直しをすれば良いと誰もが考えますがその改革は容易ではありません。今の制度があまりにも関係者・当事者に優しい制度になっているからです。手厚い給付制度のお陰で医者も患者も家族も費用に関して、厳しい選択を迫られずに済んでいます。月何千万の治療も高額医療制度で10万円程度の自己負担。少ない自己負担で最先端の治療を受けることが出来ます。生活保護を受けている人はすべて負担ゼロです。
また、医者にとっても優しい制度です。患者の懐具合を心配することなく、必要と自分が判断する治療を医者が続けることが出来るのです。日本の医療関係者は「命とコストの比較」と言う厳しい選択に向き合わなく済み、海外の医者からは驚きと羨望の眼差しで見つめられています。ちなみに整形外科で簡単に処方されるシップ薬1年分は毎年東大や京大なら1校、千葉大なら8校作れるとのことです。たかがシップ薬ですが大変な金額です。
●高齢者に対する医療者の考え
「死なせない」ことが第一の命題となっているそうです。その為に1分1秒でも長く生かす為、あらゆる努力を尽くしています。しかし、高齢者に対する救命措置や大手術は本人にとって過酷なものです。本来なら穏やかな死を迎えられたかもしれない患者に過剰な治療は大きな苦痛を与え、家族との貴重な別れの時間も奪う結果となります。また、1分1秒でも長く生かすその終末の治療の為に膨大な医療費が費やされます。誰でも必ずは訪れる死に当たり、この様なトコトン終末医療を当然の様に続けていたら、遠からず皆保険の崩壊を招き、本来なら救える筈の命を金銭的理由で見捨てなければならない事態も起きうるのです。
※私は義父・実母・夫の命の限界を知り、自宅で在宅医療の医師達の協力を得て、自然な形で看取りました。穏やかな静かな時間であり、日本の医療費削減にも寄与したことにもなりました。
●現在の社会保障制度の現状は太平洋戦争末期に似ている
1つの予算項目が国家予算の3割を超えると社会は破綻に向かうと言われています。太平洋戦争が始まる段階の軍事費がそうであったようです。今、社会保障関連予算は国家予算の3割を超えています。しかも、一般歳出における、社会保障関係費は50%を超えます。また、自治体に支給される地方交付金の多くが社会保障関連事業に使われています。さらに、私達や企業が毎月支払う社会保障保険費の半分近くが高齢者医療費に回され、不足分を補填しています。現在の社会保障制度の現状は太平洋戦争末期に似ていると言われています。太平洋戦争が原爆を落とされるまで終焉になりませんでした。同様に社会保障制度が崩壊するまで手をこまねいていたら、どうなるのでしょうか?次の世代の為にも今、何を行うべきか国民の一人一人が真剣に考え、必要な努力をしなければ社会保障制度の未来はありません。
大澤☛
皆さん、現在の日本の社会保障制度、特に健康保険制度の現状を具体的に理解して頂けたでしょうか?国民皆保険制度は世界に無い素晴らしい制度ですが今その制度が危機的状況にあります。その崩壊は安心して病気や怪我で病院にかかれない、つまり持病のある人や病気になった時には大変な事になるでしょう。それをしっかり理解して下さい。次号はその原因についてお伝えしていきたいと思います。
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